はじめに
建設業許可の相談を受けていると、「専任技術者の専任性とは何ですか?」「テレワーク勤務でも専任とみなされますか?」という質問をよくいただきます。
働き方改革やリモートワークの普及により、営業所専任技術者や経営業務管理責任者を在宅勤務・サテライトオフィス勤務で運用したいというニーズも増えているため、最新の考え方を踏まえて整理しておくことが重要です。
以下では、建設業許可における「専任性」の基本的な考え方と、テレワークが認められる条件を、できるだけわかりやすく解説します。
建設業許可における「専任性」とは
建設業許可では、各営業所ごとに「専任技術者」を置くことが求められていますが、この専任技術者には「専任性」が必要とされています。
一般的に、専任性とは「営業所に常勤して、専らその職務に従事していること」を意味し、他の会社や他の営業所との兼務や、形式的な在籍だけでは要件を満たしません。
専任技術者は、請負契約の適正な締結や工事の履行を技術面から確保する役割を担っており、日常的にその営業所に所属し、技術面の相談やチェックを行っていることが求められます。
そのため、勤務実態(出勤の状況、給与の支払い、人事権など)を総合的に見て、本当にその営業所の技術者として常勤していると言えるかどうかがチェックされます。
「常勤」「専任」の具体的なイメージ
専任技術者の常勤・専任性は、タイムカード、給与台帳、雇用契約書などで確認されることが多く、週に数回だけの出勤や、別会社とのフルタイムのダブルワークがある場合は、原則として専任とは認められません。
名義貸しのように実際には業務に従事していないケースも、専任性を欠くものとして不許可や更新拒否のリスクがあります。
また、経営業務管理責任者や支店長などの地位にある者についても、「常勤」であることが求められており、専任技術者と同様に勤務実態が重視されます。
肩書きや名刺だけでなく、日々その営業所の運営や契約・技術面をきちんと担当していることが重要だと理解しておく必要があります。
テレワークは「専任性」を満たすのか
新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、建設業でもテレワークの活用が議論されるようになりました。
現在は、一定の条件を満たすテレワークであれば、直ちに常勤・専任の要件を欠くものとは扱われないという考え方が示されています。
ここでいうテレワークとは、営業所等勤務を要する場所以外の場所で、情報通信技術を活用して、営業所等で職務に従事している場合と同等の職務を遂行できる形態を指します。
つまり、「単なる在宅待機」ではなく、契約書や設計図書などを確認でき、メールや電話で即時対応が可能であり、必要に応じて営業所や工事現場に出向ける体制が整っていることがポイントになります。
テレワークが認められるための主な条件
テレワーク勤務の専任技術者等が「常勤」とみなされるためには、主に次のような条件を満たすことが求められていると考えられます。
- 職務遂行環境
契約書・設計図書など必要な書類やシステムにアクセスでき、営業所で勤務する場合と同等の職務遂行が可能であること。 - 連絡体制
勤務時間中は電話・メール等で常時連絡が取れる状態にあり、緊急時には速やかに営業所や現場に出向ける体制があること。 - 勤務管理
勤怠管理システムなどにより勤務状況を適切に管理し、就業時間や業務内容が客観的に把握できるようにしていること。 - 通勤可能な距離
社会通念上、営業所に通勤可能な範囲からテレワークを行っていることが望ましいとされており、極端に遠方からの勤務は慎重に判断する必要があります。
これらの条件を満たしていれば、専任技術者や経営業務管理責任者がテレワークを行っていても、直ちに常勤・専任性を欠くものとは判断されないと考えられます。
テレワーク活用のイメージ例
例えば、専任技術者が週に数日は営業所に出勤し、その他の日は自宅やサテライトオフィスから、見積書・契約書のチェック、技術的な問い合わせ対応、下請業者との打合せなどをオンラインで行うケースが考えられます。
この場合、勤怠管理ソフトで勤務時間を記録し、営業所の電話を転送するなどして常時連絡が取れるようにし、必要に応じて現場や営業所に移動できる体制が整っていれば、「常勤」として取り扱われる余地があります。
一方で、別会社にフルタイムで勤務しながら建設業者の専任技術者を兼ねるような形態や、実際にはほとんど業務に従事していない状態は、テレワークであっても専任性を満たさないと判断される可能性が高いです。
テレワークはあくまで勤務形態の一つであり、専任技術者としての実際の職務遂行と常勤性が担保されていることが前提になると理解しておくことが重要です。
まとめ
建設業許可における専任技術者の「専任性」とは、営業所に常勤し、専らその職務に従事していることを意味し、名義貸しや他社との兼務では原則として要件を満たさないとされています。
近年のガイドラインでは、一定の条件を満たすテレワークは「常勤」の範囲に含まれると整理されており、働き方改革の流れの中で、専任技術者等のテレワーク活用は現実的な選択肢となりつつあります。
ただし、テレワークであれば何でも認められるわけではなく、営業所勤務と同等の職務遂行が可能であること、常時連絡が取れること、適切な勤務管理が行われていることなどの条件を満たす必要があります。
自社の体制が専任性・常勤性を満たしているか不安がある場合は、最新の建設業許可に関する公式資料や各自治体の運用を確認しつつ、専門家に相談しながら慎重に検討することをおすすめします。
テレワークを前提とした専任技術者の配置を検討されている事業者様は、まず自社の業務実態と要件を照らし合わせたうえで、「どの程度テレワークを認めるか」「緊急時の対応体制をどう整備するか」といった具体的なルール作りから始めてみてはいかがでしょうか。


