はじめに
「経営管理」在留資格は、日本で会社を設立し経営・管理を行う外国人が取得する重要な在留資格です。申請時に提出する事業計画書は、事業の継続性や安定性を具体的かつ合理的に示す必要があり、その内容は審査の大きなポイントとなります。特に「売上予測が非現実的」と指摘された場合は、追加の根拠やシミュレーションを求められるケースが多いため、適切な対応が求められます。今回は、申請者が事業計画書で売上予測にリアリティを持たせる方法と公共機関のルールに沿った対応策について解説します。
経営管理ビザ申請における事業計画書の役割
経営管理ビザの事業計画書は、融資や投資のためのものとは異なり、あくまでも「在留資格該当性」や事業の安定性・継続性を証明するために作成するものです。出入国在留管理庁が求める主な要件は以下の通りです。
- 法律に則った適正な事業運営
- 資本金や事業規模、継続等の確保
- 事業所の物理的な確保
- 経営・管理経験や報酬の確保
公式サイト(出入国在留管理庁)でも、継続性や安定性は単に資本金や施設ではなく、売上高・利益率・従業員数など複合的に判断されると明記されています。
売上予測が非現実的と指摘された場合の一般的な問題点
事業計画書を審査する入管は経営の専門家ではないものの、売上予測に根拠が乏しく非現実的な場合は審査で不許可となるリスクが高まります。たとえば以下のような記載が問題となります。
- 近隣競合や市場調査が不十分
- 類似事業との比較検証がない
- 資金や人員体制に対して売上が過大
この場合、売上だけでなく初期資金、経費、減価償却費、保険料、税金等、多面的な実現可能性を説明する必要があります。
売上予測の現実性を高める具体的な対応策
1. 市場調査・競合分析を具体的に記載する
経営管理ビザ申請の事業計画書には、ターゲット市場の客観的なデータや競合店舗の売上、人口統計など具体的な数値を根拠として記載しましょう。
例
「○○駅周辺には同業種が5店舗存在し、平均月売上は約△△万円。自店舗は差別化されたメニューや価格設定のため、□□万円の売上を見込む。」
2. 収益予測の根拠提示
見込み客数×単価×回転率など、一般的なビジネスモデルの数式で売上根拠を提示すると入管審査官にも理解されやすくなります。
例
「ランチタイム1日平均来客数が30名、客単価1,000円の場合、1ヵ月の売上は900,000円(30名×1,000円×30日)と算出した。」
3. 保守的シナリオ・下方修正のシミュレーション
市場状況や競合の増加などによる売上減少シミュレーション結果を記載することで、現実的なリスクヘッジができることを説明するのも重要です。
例
「競合増加で売上が20%減少した場合でも、資金繰りには問題はなく、事業の継続が可能。」
4. 外部専門家による試算表の添付
税理士や中小企業診断士など専門家が作成した試算表・収支計画書を添付することで実現可能性を補強できます。
事例
中国出身のAさん(40歳・単身)が、東京にてベトナム料理店を開業する申請を検討中。はじめての起業なので、事業計画書の売上予測は月200万円と設定。しかし、入管より「予測が非現実的」と指摘されたため、Aさんは以下の対応を実施。
- 近隣類似店舗(7店舗)の月売上を調査し、平均150万円に下方修正
- 客単価、回転率、季節変動など具体的な根拠を提示
- 成功だけでなく赤字シミュレーションも記載
- 地元商工会や中小企業診断士に試算表の作成を依頼
以上の改善を事業計画書に反映したところ、現実性が高まったことで審査通過につながった。
注意事項:事業計画書の作成時のポイント
- 公的根拠を明記し、客観性を持たせること
- 名前や属性等は架空設定とすること
- 成功予測だけでなく、リスクも可視化すること
- 2,000文字程度にまとまるボリュームを意識し、図表・写真等も有効
まとめ
経営管理の在留資格を取得するための事業計画書は、「売上予測が非現実的」と指摘された場合、客観的な根拠や市場調査、リスクシミュレーションなどを加えることで、計画の実現性・継続性を示す必要があります。最終的には、専門家の試算表や公的資料を活用し、入管審査官が納得できる内容にまとめることが最良の対応となるでしょう。公式情報に基づいた記載を心掛け、誤りのない資料提出を目指しましょう。